一度、関数やスレッドを使用したとても高度なライブコーディングを行うと、あるスレッドが止まってしまうような間違いがとても容易に発生することを理解するでしょう。Run
ボタンを押してスレッドを再スタートさせることは容易にできるので、それは全然大した問題ではないのでしょう。しかし、スレッドを再スタートさせるときは、元々のスレッドと時間がずれることになります。
以前話した時に、新しいスレッドがin_thread
として作られると元のスレッドのすべての設定が継承されることを学びました。これは現在の時間を含んでいます。つまり、スレッドが同時にスタートするときには常に他のスレッドと同期していることを意味しています。
しかし、あるスレッドを独自のタイミングで起動したときは、現在実行中の他のスレッドと同期していることはほとんどないでしょう。
Sonic Pi はcue
とsync
という関数を使ってこの問題の解決方法を提供します。
cue
はすべての他のスレッドに向けてビートメッセージを送ることができます。初期状態の他のスレッドでは、これらのビートのメッセージは関係付けられず、無視されます。しかし、sync
関数を使えば、あなたは簡単にこの関連付けを登録することができるのです。
sync
という機能は、一定の時間、実行中のスレッドを止めるsleep
という関数と非常に似ていることに気づくことが重要です。しかし、sleep
ではどのくらい休止させるかを決めることができましたが、sync
ではそれを決めることができず、sync
は長さに関わらず、次のcue
が出てくるまで待つのです。
それでは、もうちょっと詳しく見ていきましょう。
in_thread do
loop do
cue :tick
sleep 1
end
end
in_thread do
loop do
sync :tick
sample :drum_heavy_kick
end
end
ここでは2つのスレッドが使われています。1つは、音は鳴りませんがメトロノームのような機能として1秒ごとに:tick
というビートメッセージを送っています。2つ目のスレッドは、tick
というビートメッセージと同期し、その際にcue
のスレッドの時間の情報を継承して実行を続けます。
この結果、:drum_heavy_kick
のサンプルは、たとえ同時に実行されていない2つのスレッドであったとしても、他のスレッドが:tick
のメッセージを送信したタイミングで、ぴったりと聴くことができるでしょう。
in_thread do
loop do
cue :tick
sleep 1
end
end
sleep(0.3)
in_thread do
loop do
sync :tick
sample :drum_heavy_kick
end
end
このちょっとやっかいなsleep(0.3)
は、1つめのスレッドとは時間がずれた2つめのスレッドを作り出してしまいます。しかしながら、cue
やsync
を使えば、タイミングがずれてしまうようなアクシデントを回避してくれます。
cue
には:tick
以外のどんな好きな名前でも付けられます。その際には他のスレッドと同期させるために必ず正しい名前を使用する必要があります。もし違った場合、永遠に(もしくはストップボタンを押すまで)それはcue
のメッセージを待ち続けることになります。
それではcue
の名前付けを見てみましょう。
in_thread do
loop do
cue [:foo, :bar, :baz].choose
sleep 0.5
end
end
in_thread do
loop do
sync :foo
sample :elec_beep
end
end
in_thread do
loop do
sync :bar
sample :elec_flip
end
end
in_thread do
loop do
sync :baz
sample :elec_blup
end
end
ここではメインのcue
ループでビートメッセージをランダムに:foo
と:bar
、:baz
に送るようにしています。それから3つのスレッドがそれぞれ独自に同期して、それぞれ異なるサンプルの音を再生します。実際には、sync
スレッドとして用意した3つのスレッドのいずれかがcue
スレッドとランダムに同期し、0.5秒毎にサンプル音の再生を聴くことができるでしょう。
逆にsync
スレッドを単に次のcue
まで待たせるようにしても、もちろんそれは動作します。