ランダムストリームに乗る

このチュートリアルの第4話では、いくつかのシンセ・リフをコーディングしながら、ランダム化を簡単に見ました。ランダム化は私のライブコーディングDJセットの重要な部分であることを考えると、その基礎をより詳細に取り上げることが有用であると考えました。では、幸運の帽子を被って、ランダムストリームをサーフィンしましょう!

ランダムは存在しない

これはあなたを本当に驚かせるかもしれませんが、Sonic Piのランダム化関数で遊ぶときに最初に学ぶことは、これらの関数が実際にはランダムではないということです。これは実際にはどのような意味でしょう? では、いくつかのテストを試してみましょう。まず、0と1の間の数字をあなたの頭の中で想像してください。そのまま私に教えないでください。私が当ててみましょう…それは0.321567ですか? 違いましたか? ブー、当然ながら私はこれを上手く当てることができません。ではもう一度やりましょう。今度はSonic Piに番号を選んでもらいましょう。v2.7以降のSonic Piを起動して、乱数を要求してみてください。そして先程と同じように私には教えないでください:

print rand

では当ててみましょう… それは0.75006103515625ですか? 合ってましたか! でも、あなたが少し疑っているのが分かります。それは多分ただのまぐれ当たりでしょう。もう1度やってみましょう。もう1度実行ボタンを押して、出たものを見て… 何? 0.75006103515625? これは明らかにランダムではありません! あなたは正しい、ランダムではないですね。

ここでは何が起きてるでしょうか? ここで登場するコンピュータ科学の用語は決定論です。これは、偶然によるものは何も無く、すべてが運命づけられていることを意味します。あなたのバージョンのSonic Piは、上記のプログラムで常に 0.75006103515625を返すようになっています。これはかなり役に立たないかもしれませんが、Sonic Piの最も強力な部分の1つであることを断言させてください。もしあなたがそれを追求すれば、作曲やライブコーディングDJセットの基本的なビルディング・ブロックとして、Sonic Piのランダム化の決定論的な性質に依存する方法を学ぶことになるでしょう。

ランダムメロディ

Sonic Piが起動すると、441,000の事前に生成された乱数のシーケンスが実際にメモリにロードされます。rand rrandのようなランダム関数を呼び出すと、このランダムストリームが関数の結果を生成するために使われます。ランダム関数の呼び出しする度に、このストリームから値を消費します。したがって、ランダム関数への10回目の呼び出しはストリームからの10番目の値を使用します。また、Runボタンを押すたびに、その実行のためにストリームがリセットされます。これが、私がrandの結果を予測できたり、’random’なメロディーがいつも同じである理由です。皆さんのSonic Piは、まったく同じランダムストリームを使用しています。これは、私たちの作品をお互いに共有するときに非常に重要です。

繰り返し可能なランダムメロディを作るために、この知識を使ってみましょう。

8.times do
 play rrand_i(50, 95)
 sleep 0.125
end

これを空いたBufferに入力してRunを叩いてください。50から95の’ランダムな’音符で構成されるメロディーを聞くことができるでしょう。メロディーが終わったら、もう一度Runを叩いてみてください。先ほどと全く同じメロディーを聞くことができるでしょう。

便利なランダム化関数

Sonic Piにはランダムストリームを扱う便利な関数がたくさんあります。その中でも有用な関数のリストです。

詳細情報や例については、ヘルプにあるそれぞれの関数のドキュメントを参照してください。

ランダムストリームのリセット

選択した音符のシーケンスを繰り返す機能は、リフをダンスフロアで再現するためには不可欠ですが、あなたが望んだリフではないかもしれません。もし、いくつかの異なるリフを試して、一番好きなリフを選ぶことができれば、素晴らしいことではないでしょうか? これが本当のマジックの始まりです。

ランダムストリームをuse_random_seed関数で手動で設定することができます。コンピュータサイエンスでは、ランダムシードとは、ランダムな値の新しいストリームが芽吹き、開花する出発点です。試してみましょう:

use_random_seed 0
3.times do
  play rrand_i(50, 95)
  sleep 0.125
end

いいね。上のコードのランダムメロディーの先頭から84, 83, 71の3つの音符が得られました。ここで、シードを別な値に変更できます。これはどうでしょう:

use_random_seed 1
3.times do
  play rrand_i(50, 95)
  sleep 0.125
end

興味深いことに、ここで83, ` 71, 61`を取得します。ここの最初の2つの数字は、先程の後ろ2つの数字と同じです - これは偶然ではありません。

ランダムストリームは「あらかじめ準備された」値の巨大なリストに過ぎないことを思い出してください。ランダムシードの使用は、そのリスト内の特定の位置に単にジャンプするだけです。それについて考えるもう1つの方法は、あらかじめシャッフルされたトランプカードの巨大なデッキを想像することです。ランダムシードを使用することは、デッキの特定の位置でカードを分けることです。このことの素晴らしい点の1つは、ランダムストリームを行ったり来たりするこの機能こそ、音楽を作るときに私たちに大きな力を与えるということです。

ランダムメロディーに戻りましょう。今度は新しいランダムストリームのリセットで得られた8つの音符だけでなく、ライブループに入れて演奏中に実験できるようにしています:

live_loop :random_riff do    
  use_random_seed 0
  8.times do
    play rrand_i(50, 95), release: 0.1
    sleep 0.125
  end
end

では、上のコードが動いている間に、シードの値を0から別な何かに変えてみましょう。100999はどうでしょう。それからあなたの好きな値を試して、実験して遊んでみましょう。そして、どのシードが一番好きなリフを生成するか見てみましょう。

まとめ

今月のチュートリアルでは、Sonic Piのランダム化機能の動作を技術的に詳しく説明しました。信頼性の高い方法でランダム化を使用して音楽内で繰り返し可能なパターンを作成する方法と、それがどのように動作するのかについて、何らかの示唆を与えられたことを願っています。そして、繰り返し可能なランダム化をどこでも使用できることを強調しておきます。例えば、音符の音量、リズムのタイミング、リバーブの量、現在のシンセ、エフェクトの掛かり具合などをランダム化することができます。これらについて、将来いくつかの応用を詳しく見たいですが、ここでは簡単な例を挙げておきます。

空いたBufferに以下のように入力し、Runを叩いてみてください。そして、シードを変更してみて、(演奏された状態のまま)もう1度Runを叩いてみてください。それによって作り出されるさまざまなサウンド、リズム、メロディを探索してみてください。もし素敵なものを見つけたら、シードの数字を覚えておいてください。最後に、あなたが好きなシードがいくつか見つかったら、お気に入りのシードを切り替えて曲にするだけで、ライブコーディングのパフォーマンスを提供できます。

live_loop :random_riff do
  use_random_seed 10300
  use_synth :prophet
  s = [0.125, 0.25, 0.5].choose
  8.times do
    r = [0.125, 0.25, 1, 2].choose
    n = (scale :e3, :minor).choose
    co = rrand(30, 100)
    play n, release: r, cutoff: co
    sleep s
  end
end
live_loop :drums do
  use_random_seed 2001
  16.times do
    r = rrand(0.5, 10)
    sample :drum_bass_hard, rate: r, amp: rand
    sleep 0.125
  end
end